大分カイコウ OITAKAIKOU

REPORT

Camp

2020.01.16

大分カイコウcamp vol.3「アウトバウンド」 第一部

今回の大分カイコウcampは「アウトバウンド」~大分の魅力ある商品を海外へ販路開拓するには?~をテーマに、自社の商品を海外展開している株式会社国東時間 代表取締役社長 松岡勇樹さんによる講演に続き、松岡さんに加え兼松株式会社 九州支店長 出口義且さん、Inagora株式会社 ディレクター赤塚保則さん、独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO) 大分貿易情報センター 係長 二原経太さんによるトークセッションを行いました。参加者の中には、自社の製品を日本に限らず海外展開を考えている方もおり、「そもそもアウトバウンドとは?」という問いから「資金繰りの方法」など具体的な質問に対してもお答えいただきました。

大分カイコウとは?

大分にゆかりのあるビジネスパーソン同士が、既存ビジネスの発展やまったく新しいビジネスの創発や興隆を目指して一堂に会する。ジャンルの垣根なく、人・ものごと・ビジネス・思想など、あなたと誰かの邂逅(思いがけない出会い)が生まれるかも知れない… そんな場を提供する大分カイコウ。

株式会社国東時間での事業紹介

松岡さんは、元々建築事務所で建築士として活動されていました。現在は、段ボール製の立体商品『d-torso』を開発し、世界に商品の販路を拡大しています。松岡さんの事業の始まりは、ニットデザイナーの方が東京で行った展示会でニットにあうマネキンを探しても見つからず、松岡さんに依頼した事から国東時間の代表作品、ダンボールのマネキンが誕生しました。当時はパソコンがないので近くのコンビニでダンボールを貰い、型紙に沿って1枚1枚切って組み立てていったそうです。この展示会がきっかけで国東に戻り、事業をはじめました。マネキンを作る度に見た目はリアルになりましたが、組み立てる方式は当初から変わっていません。一つの特徴として、同じ形でも拡大縮小が自由にできたり、お客様からの依頼があればその形にあわせて組み立てる事も可能ですので、形態のバリエーションが豊かな面があります。また、レーザーで切れる素材であればすべて加工することが可能ですので、素材のバリエーションが豊富な面もあります。この2つをかけ合わせて商品開発を行っています。

実際の海外事例

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ディズニーとのコラボ商品を制作するには、さまざまな規制があり困難もありましたが、タイミングもありプラットフォームを作ることになりました。しかしコラボ商品を海外展開しようとすると、各国のディズニーのライセンスが必要になるため、この商品は国内のみとなっています。逆に、国外でライセンス取得をすると誰でもそれらの国で商品の制作が出来るようになります。
ダンボールは大量生産されており単価が安いため、安い素材を用途展開してもう一度パッケージを作りなおしました。似たような形であれば造形することが可能ですので、豚の形をした模型の上半分を開けると中にハムが入っていたり、地元の酒屋さんとコラボをした時はペンギンの模型の中にシャンパンボトルが収納できたりといった商品も開発しています。

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創立2年後にニットの展示会に提供したマネキンをみたフランス人の目に止まり、海外からのコンタクトがありました。同時期に韓国のディスプレイ関係の方から直接連絡が来たことによって、韓国へのコネクションが生まれました。その当時は未知の世界でしたが、「やってみないとわからない」という気持ちでの挑戦が始まりでした。まずはフランスを拠点に、3年に1回行われるユーロショップという、店舗設定・デコレーションやマネキンディスプレイなどを扱っている展示会に出店し、ヨーロッパ圏やフランスを中心に販路を作っていきました。日本での定価が1000円だとしたらフランスでは3000円程度と、輸送コストやフランスの代理店からドイツの代理店に渡ったりなどの流通コストもかかってしまいます。取り引き先ではフランスの町などがありましたが、リーマンショックの時に代理店がほぼ倒産してしまい、フランスの会社に対して500万ほどの売掛が残っている状態で回収が出来なかったという失敗もありました。回収はできなかったものの、お客さんは増えて高い評価を得ていたので、直接取引を行いましたが、代理店を通さなければ徐々に疎遠になるような状況もありました。その当時、国内向けのライセンス商品が増えてきたので、一旦国内向けに推移していきました。
2011年の震災の際、日本の市場がどうなっていくのか悩んでいた時に、JETROの声掛けがありニューヨークの展示会に出店しました。ブースでは大きいものを展示し、人の目をひきつけて小さいものを売るというスタイルで展示していました。JETROのブースでは、その国のネイティブな人に接客を行ってもらうセールスレディーが付いており、商品の紹介などは彼女たちが行い、商談などの重要なところは自分たちで行います。語学はさほど問題にはなりませんでした。ブースでは「とにかく目立つ」事が重要だと思います。また、一緒にブースを出している人達で情報交換ができたことも有益でした。

海外出典する時に代理店やコンサルタントはよく見なければならない。

海外展開を始める時に何も知識がなかったので、代理店が必要になりました。しかし、選ぶ際には代理店は儲かっていても、売上につながってくるのかを見極めなくてはいけません。展示会をしていると、名刺が山ほど集まりますが、現地でその人との関わった時の感覚が重要なのかと思います。
商談が成功した例としては、大きなデパートの婦人服売り場にマネキンを置きたい、との依頼があり、実際にマネキンを展示しました。自分の作った作品が周りに回って、映画の小道具としても使われている事もありました。一方、アメリカのIT企業のオフィスにヘラジカとクマの巨大模型の依頼を受け、広告になると思い利益ほぼ無く引き受けたのですが、オフィスのセキュリティの観点から、この設置画像は一つも出回る事はなく終わったこともありました。

商品で世界をつなげることに意識して

私達の製品は材料が軽いため、切ったピースを海外に持っていき現地で組み立てる事ができるので、世界をつなぐプロセスとして商品を作っています。
今は20年間のデータを元に海外でライセンス化して、海外でも制作できる環境を作っている段階であります。
今現在でも各地にコピー商品が多く出回っていますが、本物を求めてユーザーが私達のもとへ来ることが増えてきました。特許問題もありますが、争いごとに時間を費やすのではなく、新たしいものを展開してていく事を考えています。これからの目標は、ライセンスを各地に広げて行きたいと思います。

トークセッション

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出口義且氏
兼松株式会社 九州支店長
http://www.kanematsu.co.jp/
食品関係を主に取り扱っており、2年ほど前から日本酒のイーコマースを始めました。海外に輸出してる日本酒は一握りなのですが、有名なもの以外にもほしい人はいますので、ニーズはあると思っています。酒蔵さんにこのサービスに登録してもらうだけで、海外に売ることができきます。問題点としては、国によって輸入規制が違うことです。そこで、まずはEUに絞り、パターンのパッケージ化ができてしまえば、各国に展開していけるのではと考えています。特徴としては、このサービスで注文すると発注者の軒先に届けられるようにしています。

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赤塚保則氏
Inagora株式会社 ディレクター
https://www.inagora.com/
96年にソフトバンクに入社し30の事業の立ち上げ、08年にアリババジョイントベンチャー立ち上げなど、100社ほどの越境EC支援に関わってきました。現在は、Inagoraにて越境ECを通した、日本商品の中国への販路拡大を目指しています。また、地方創生事業を元に、地方とのコラボ商品も扱っています。

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二原経太氏
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO) 大分貿易情報センター 係長
https://www.jetro.go.jp/
JETROでは貿易投資相談業務の他、各国のバイヤーさんを大分へお呼びして、海外販路開拓のための商談会等を行っています。最近では「ニッチマーケット商品を売りたい」とお考えの企業様と一緒に専門家の方とロシア極東地域へ渡航し、サポートさせていただきました。海外展開を考えているお客様一人ひとりに専門家を付けてご支援するサービスもございますので海外展開をお考えの方はぜひ一度JETRO大分までご相談ください。

参加者からの質疑応答

Q.アウトバウンドはどのようにするのだろう。
(出口義且さん)そこまで難しいものでは無いですが、ロットにもよります。また、冷凍品冷蔵品は輸送等の規制が複雑な面がありますが、常温の食品に関しては簡単です。どこに商品を売りたいかを決め、輸送の代行をしてくれるところを探してみてはいかがでしょうか。もしわからなければ、JETROさんのHPにヒントが載っているので、参考にしてみてください。また、資金の回収が困難な状況が多いので、前金を払ってもらう事でリスクを下げる事が必要です。

Q.資金繰り
(二原経太さん)決済方法を工夫することで、確実に回収をすることが出来ます。
(赤塚保則さん)越境ECでは、前金での回収が出来るため、リスクを減らせますし、また初めて海外展開する方にとっては一人ひとりの取引になるので、数は知れていますが安心して取引を行えます。やはり、商売上手な国民性の国ではお金を先にもらう事でリスクを回避しましょう。
また、貿易保険をかける際に貿易決済上テクニックがいくつもあるので、貿易会社を噛ませておくことで安心出来ると思います。

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Q.発注数はどのように決めたらよいのか。
(赤塚保則さん)各業者さんのボリュームに合わせて決めると良いのかと思います。また、ものによって変わってきます。肉・魚はややこしく、和牛は輸出について国同士の取り決めがあり、日本の国で加工したものという証明書を出してもらって初めて出来るものです。迷ったらJETROのHPを参考にしてみてください。

Q. 信頼はどこで得る?
松岡勇樹さん)実際に取り引き先の人に会って、感覚で決めています。相手が儲けたいから取引をしているのか、この商品を広めたいから取引しているのかを見極める必要があります。中間業者はほとんどが儲けに持ってくるので信用はしないほうがよいです。相手を信用して商売がはじまるのが理想なのですが、どこで売りたいかというより、買ってくれる人がどこにいるかが重要です。商品力があれば、相手は来るので商品力を上げることに注力したほうが良いかと思います。

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Q.ブランディング
(赤塚保則さん)ターゲットを中国に絞るのであれば、中国は日本のことを良く勉強していますので「中国で売れるには日本で売れるようにする事」が必要です。SNS文化なので、口コミやSNSで認知をあげる手法が効果的なのではないでしょうか。
(二原経太さん)何者なのかがわからない、価格がわからないものなどは信用されないので、英語に対応したパンフレットを作成するなど、商品を明確化させることも大切だと思います。
(出口義且さん)世界的なブランド・マーケティングを行うには、どこのマーケットに行くのかを見極めてターゲット・地域を確定した後に手法が変わってくるので、そのターゲットに合わせてブランディングを行っていくことも大切です。