大分カイコウ OITAKAIKOU

REPORT

Camp

2020.03.02

大分カイコウcampvol.4「ボーダレス」~ローカルコミュニティのホントのところ~第一部

今回の大分カイコウcampは「ボーダレス」~ローカルコミュニティのホントのところ~をテーマに、京都移住計画代表の田村篤史氏、インバウンドマーケティング支援や郊外型コワーキングスペースfactoriaを運営している㈱HAM代表の佐藤仁美氏、一般財団法人こゆ地域づくり推進機構代表理事の齋藤潤一氏をゲストにお招きし、大分で活動されている方々と一緒にディスカッションを一部・二部に分けておこないました。会場は古民家宿のIn Bloom beppuの雰囲気もあり、登壇者と参加者の距離も近く参加者からの質問に答える会場一体となった進行で行われました。

登壇者紹介

第一部では、参加者の悩みなどから始まり、地方でコミュニティを作っている方々に「シビックエコノミー」をテーマにトークセッションしていただきました。

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田村篤史氏
京都移住計画代表
https://kyoto-iju.com/
株式会社ツナグムの会社の運営。別府には1年だけ住んでいた経験があり、今の活動をしている原点は別府にあったそうです。人や場所に関わる問題・課題の相談を受け、その問題やテーマに沿ったプロジェクトチームを適宜作って解決しています。また、京都移住計画のサイト運営や、町家のシェアオフィス運営、西陣織の帯の会社の一部をコワーキングやシェアオフィスにし、黒字化させるまで共同運営した実績があるほか、京都信用金庫さんと共にオフィスビルの企画、コンセプト作り・京都府、市と一緒に移住をテーマにした移住促進事業や他県との関係人口創出の事業などを行っています。

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花田 潤也氏
In Bloom beppuオーナー
https://www.inbloombeppu.com/
別府がたまらなく好きで、一年半前に熊本から別府へ単身赴任で移住してきました。In Bloom Beppuの他に「地獄の三丁目 鬼のすみか」というゲストハウスの運営もしています。今回の会場に使用させてもらっているIn Bloom Beppuは、1941年に材木商の別荘として建てられたもので、非常に趣深い古民家宿です。

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佐藤 正敏氏
NPO法人別府八湯温泉道名人会理事長
http://beppu88.com/index.html
障害者のヘルパーをしながら温泉道名人会の運営をしています。仕事を機に、別府に移住してきました。観光地に住むことで観光や温泉に興味が湧き、2008年に別府温泉道温泉名人会に入りました。活動を進めるうちに2014年にNPO法人化し、その当初から理事長をしています。温泉道名人会の目的は「別府を温泉で盛り上げる」ということ。スタンプラリーで八十八湯を巡ると入会できる仕組みになっており、会員さんの会費で成り立っています。

ゲストと参加者とのディスカッション

<Qなぜコミュニティービジネスをはじめたのか?>画像4

地域に溶け込んでからがスタート

花田氏)別府のために何かやりたいという想いで仕事をやめ、手段としてゲストハウスをしています。最初のうちは「別府の地域の人と外国人が混ざっていったら面白いだろうな」と妄想をしていました。
その後この物件が決まり自治会長さんに、「別府の町はこういうふうにして、こういうことになったら面白いと思うんですよね」と自分の想いを2,3時間聞いてもらったんです。すると話を聞き終えた自治会長さんが「君のやりたいことは十分にわかった。それをやったら面白いだろうね。
ただ、今の調子でみんなに話してごらん。誰一人として協力してもらえないよ。」と言われました。まさに正論で、何かコミュニティービジネスをやりたい!俺が盛り上げるんだ!となっている事に気付かされました。
そういう人は意外に多く、私のところにもよく相談に来ます。でも、実際はその街のことを何もわかってなかったりとか、そこに住んでいる人が何を考えているのかわからない人達がやろうとすることは間違っているのだなと気が付きました。
そこで自治会長さんに「僕に出来ることは何ですか?」と問いかけると「じっくり自分のやりたいことを町に入って、自分がこの町の人になって、自分のお金や時間を使って、じっくりやって信頼を勝ち得た先に君のやりたいことが出来る。まずは自治会に入っていろんな事に専念すれば自ずとそのやりたいことを応援してくれるようになるから。」と言われ、1年半やり続けたら本当に皆さん応援してくれるようになり、今の活動が出来ています。

地道な活動が地域から信頼を産み、大きな組織へと変化していった

佐藤氏
名人会も当初こんなに大きな組織になるとは思わなかったです。温泉に来る人は勝手に来て何も交流もなく帰っていくので、そこをなんとかしたいという想いから「交流の場」「情報発信の場」を作ろうということで名人会ができました。
そこから「会員制にしてはどうか?」という案のもと、まずは入会金1000円から始めました。別府市自体も、「やっぱり別府は温泉だよね」ということで湯〜園地をやってみたり、温泉を使ったPRを行うにあたって僕らの名人会があったので、別府市の観光協会から「温泉を案内してください」「情報をください」という依頼が名人会に話が来るようになってきました。
その当時約200人の会員がいて、県外の会員さんには支部長になってもらい、各地で別府のPRをしていただきました。現在は「温泉がなくなっては困る」という事で、経営が難しくなってきている温泉を持続させようと、おそうじプロジェクトをはじめました。
ボランティアで温泉を回り掃除をしていくのですが、最初は怪しいと思われていたのが、続けていくと新聞などのメディアに取り上げられるなど信頼を得ていきました。地元の温泉は地域の人たちで維持している温泉なんだけど、人口が減って地域の人たちでやれなくなっている。
そこで、自治会長さんなどから「掃除をしてくれる人を探してくれないか」という依頼のもと、名人会で請負うことになりました。そうすると次は「管理と運営もやってくれないか」との話につながり、委託を受けて運営しています。その中で若干の利益があるので、土日に名人会の事務所を空けてくれる人に、1日5000円の手当を出せるようになってきました。
今では完全なボランティアではだんだんなくなってきています。できれば、名人会の事務所に常駐スタッフを雇えるようにしていきたいと思っています。また、ビジネスになるところでは無いのですが、空き番台を活用して番台で仕事が出来る「湯ワーキングスペース」の実施なども考えています。

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同じ悩みを持つ人を集めるための旗立から

田村氏
私もコミュニティビジネスとして始めようとは思っていませんでした。情報は発信するところに集まってきます。「京都に帰りたい。京都に帰るにはどうしようかな」と悩んでいたときに、やりたいと思っていることに対して旗を建てると、同じ悩みを持った仲間が集まってきました。そこがある程度のボリュームになってくると、そこの人たちの話が聞きたい、何かしたい、というニーズが現れてきました。
地方で困っている事として人口減少や人材不足がテーマになることが多く見受けられます。一方で、東京では住みたくて住んでいるわけではないという状況がある。であれば、東京にいる人がやりたいことを地方で叶え、かつそれが地方にとっても喜ばれる出会いであれば、仕事にもなるのではないか、というベースがありました。
会社として大きくしていくつもりはなく、まずは自分ひとり食べていけるビジネスになればいいと思いながら活動をしていました。

<Q継続させるために、どのような事をしているのか?>

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継続させるには温泉に入っていただくこと

佐藤氏
名人会の継続は収入がなくてもできるんでしょうけど、温泉の継続はやっぱり収入がないと持続しづらいですね。ですので、温泉に入りに来ていただけないと続けていけないのです。
今回市営温泉を値上げしてもらえるので、他の温泉も値上げしやすくなり、助かります。今70歳以上の方に180回分の市営温泉の無料券を配っているのですが、それがなくなると地域の温泉にお金を払って入らざるを得なくなる。その無料券を廃止の方向で行政側がやっと動いているので、希望が見えてきました。また、温泉同士でまとまってほしいなとは思います。
それぞれの温泉に組合があって、それぞれが運営しているので、料金を均一化して、赤のところを黒の温泉でサポート出来ないかなと考えています。
実際名人会で運営している寿温泉と由比ヶ浜温泉があるんですが、寿温泉は若干黒字で由比ヶ浜温泉は赤字なんですよ。なので、寿温泉の黒字の部分で由比ヶ浜温泉の赤字を埋めています。これをもっと広い地域で出来ないかなという想いがあります。賛同してくれるところが増えてくれればなと。

「最高」という1人の小さな声を大切に

花田氏
宿は手段でしかなく、自分は別府の良さを伝えたい。別府のファンを作るのが目的として事業を行っているので、色んな人と繋がりたいと思っています。そこで、宿に泊まりに来られるインバウンドのお客様にどんな温泉に行きたいのか事前にヒアリングを行います。
そうすることで、「最高だった!」という声を集めてるんですけど、この声を自分の母国に帰って、広めてもらう活動を地道にしています。この宿は2組限定なので、全く儲からないのですが、その分距離が近く、ここでご飯やお酒を飲んだり、私がお客様を外にお連れすることも1年近くしています。
自分は小さな一人の口コミが積もって大爆発した先に「別府最高」という声が帰ってくると思っています。もちろん自分が食べて生活していなきゃ意味がないのですが、それは仲間がいるから出来るのであって、僕の活動に賛同してくれる仲間が地道に増えているので、これからも地道に続けて行きたいです。
今は種まきをしている段階です。

「移住計画」の次のステップは企業とコラボ

田村氏
移住サロンという移住された方と移住を検討している方が出会う場を行っていました。「京都はいいところですよ!」と外に発信していたのですが、本当に京都っていいところなの?という疑問に対して、実際に移住してきた方の声にも耳を傾けたいなと思っています。
そこに移住を検討している人もその場に来てくれれば情報交換の場にもなっていくだろうと、移住サロンを始めました。
全国に広がる移住計画ですが、運営の形もそれぞれ。地元の鉄道会社さんがやりますと手を上げて立ち上げる動きなども出てきました。人が減っていく課題は、地域の昔からのインフラ系(水・電気)の会社にとっても大きな課題で、僕らのような小さな組織が手弁当でやっている活動に対して何か手助け出来るような予算の使い方をする事で、その地域に人を呼び込み、商売が出来るようになっていくという事でもあります。そのように小さな想いのところと、地域における中規模以上の会社さんとうまくコラボしてやっていくことが、次のステージかなと思います。