REPORT
2020.07.23
【大分カイコウCase】 ”楽しい”をカタチにする二人の邂逅が生んだコラボレーション apple ribbon社・鈴木セリーナ氏 × Wancher社・岡垣太造氏
Serenade Timesという名のオウンドメディアをご存知だろうか。
一般的に「オウンドメディア」と言えば、例えば保険会社が自社の保険商品を販売するために、
保険とは少し離れたファイナンシャルプランニングや、各界の成功者のエピソードなど、
エンドユーザー側の興味を惹きそうな情報をまとめたメディアを運営し、
その中で自社商品である保険サービスを提案していく、などのような使われ方をする。
タイヤの消耗を促し、タイヤをより多く販売したいから、と作られたグルメ系メディア”ミシュランガイド”など、
オウンドメディアの最たるものだ。そんな中、上記のように「売りたい」が先行するのではなく、
著名人との対談や、仲間内のただの雑談の中から生まれ、独自で唯一無二なアイテムを後付けで
企画・販売し始めたメディアが”Serenade Times”である。
このSerenadeTimes というオウンドメディアの中にある、学歴、財力、家柄、その全てを兼ね備えたもののみが
入学を許可されるという設定の架空の学校、『非学校法人鈴木学院™️』(以下、鈴木学院)と、
大分県豊後高田市に拠点を構えるWancher(以下、ワンチャー社)との間でコラボレーションが生まれた。
ワンチャー社と言えば、海外クラウドファンディングサイト大手のKickstarter(キックスターター)にて
3,000万円以上の資金を調達するなど、独自のスタイルで万年筆などのオリジナルアイテムを開発する企業として
存在感を高めている。
鈴木学院とワンチャー社(セーラー万年筆)とのコラボレーション企画は、
理事長兼学校長である鈴木セリーナ氏(以下、セリーナ氏)のふとした日常の気付き、こだわりが起点となっている。
複数の媒体で連載を持つセリーナ氏は、文章を書き起こす際、必ず自筆の下書きを書いてから
ワードファイルに文字をタイプするというスタイルをとっている。
そんな中、筆圧の問題で普通のペンなどでは気持ちよく文字が書けなかったセリーナ氏が辿り着いたのが
万年筆であった。
何本かの万年筆を日常的に使う中で、感動的なまでに使いやすい万年筆と出会ったという。
そして即座に鈴木学院で扱いたいと思うに至り、そのメーカーに問い合わせることとなる。
メーカーを調べていく中で、「万年筆、、、ワンチャー、、、大分県豊後高田市!?」と、
自身の出身地大分県にある企業であること、そして2020年2月に東京で開催された”大分カイコウ”のイベントゲスト
として同じ壇上に立った者同士であることに気付き、これはご縁とコラボレーション企画の話しが決まっていった。
ワンチャー社謹製の万年筆に”非学校法人鈴木学院”と名入れがされた万年筆は、
限定抽選販売で既に国内外から多くの問い合わせも入ってきているという(抽選販売前の2020年7月上旬時点)。
今回、ワンチャー社の舵取りをする代表岡垣太造氏(以下、岡垣氏)とセリーナ氏とが
改めて対話をしていただく場を設け、お互いの想いを語っていただいた。
かつて仕事の関係で大分県へ移住してきた岡垣氏は、紆余曲折を経て豊後高田市にワンチャー社を立ち上げた
(詳細は過去の大分カイコウCaseをご参照:https://oitakaikou.com/case002/)。
「地方に新しいブランドを作りたい」という想いを持って活動するも、
当時街ではない地域でそのようなことを言う人間は珍しく、誰も賛同してくれなかったとのこと。
しかし、設立当初より海外留学生からの採用を積極的に進めていたワンチャー社内では、
日本の価値観よりも海外の価値観の方が強く出ており、「できる」と言うメンバーが多く、
彼ら彼女らの言葉に支えられながら、今では国内以上に海外から評価の高いメーカーとしての
ブランディングを着実に築いている。
一方、セリーナ氏の鈴木学院は、仲間内の談話の中から日々のセリーナ氏のこだわりやポリシーを
学校の校則風にまとめてみたところ、本当に学校の校則のようなものが出来上がってしまい、
そのまま実際にSerenade Times内のショピング企画として鈴木学院を立ち上げてしまったという。
その後、たまたま人に勧められて使い、偶然目について購入した、などの様々なアイテムの中から、
「自分たちが実際に使って本当にいいよね」と思ったものを本気でおすすめしていくメディアへと
現在進行形で進化をしている。
”日本製で、高価格帯でも品質の良いもの、歴史あるもの”との偶然の出会い(邂逅)があれば、
コラボレーション企画を持ちかけ、鈴木学院のアイテムとしてそのブランド・メーカーの普及活動をしていきたい
とのこと。
実際に、強いこだわり、好きになったものを全力でお勧めしていく姿勢が結果となって現れており、
過去に老舗ノートブランド”ツバメノート”と作った鈴木学院オリジナルのノートは、
数多くの文房具が並べられるLOFT(ロフト)にてノート部門の一位を獲得している。
セリーナ氏のその本気の想いは大手企業にも刺さり、最近では『言語化タイムズ』というオウンドメディアを
株式会社学研ホールディングス傘下である学習参考書出版社・学研プラス(以下学研)から依頼を受けて
プロデュースしている。学研が作る様々なジャンル・用途に渡る辞典・図鑑を、
もっと楽しく読み物として広めていきたい、という想いが詰め込まれたメディアになっているそうだ。
「自分が欲しいものを作っていきたい」という想いを持ち続けるワンチャー社・岡垣太造氏と、
「日本各地に眠る本当に品質の良いもので自分たちが本当に好きだと言えるものを広めていきたい」
という想いを持つ、apple ribbon社・鈴木セリーナ氏。
両者ともに売るためのマーケティングなどはせず、良いと思ったものだけを手がけ続けており、
結果としてその想いに共鳴した人々に支持されている。
大量生産、環境問題などを無視した消費が問題視される昨今、
これからのブランド作りのヒントとなる”カイコウ”であると考える。
ささやかな要因ながら、大分カイコウでの邂逅からこのようなケースが誕生したことを誇らしく思う。