大分カイコウ OITAKAIKOU

REPORT

Case

2021.01.07

【大分カイコウCase】 おおいた食のみちプロジェクトがつなぐ架け橋 OSP 吉川龍氏/ × 後藤緋扇貝 後藤猛氏

コロナ禍で様々な業界が打撃を受けたが、一次産業を営む生産者も大きな影響を受けた。
そのような中、一次産業の生産者の方々を少しでも助けたいという思いで立ち上がったのが、
おおいた食のみちプロジェクト(以下:OSP)」だ。

OSPは立命館アジア太平洋大学(以下:APU)の学生が主体となって運営しており、
大分県内の生産者の販路開拓支援などを、学生目線でのアイデアも取り入れながら活動を行っている。

今回は、OSP運営者の一人であるAPU学生の吉川龍氏と、
過去の大分カイコウCaseでも登場した屋形島 後藤緋扇貝の後藤猛氏とのコラボ事例を紹介したい。

2人の出会いのきっかけは、OSPのサイトを通じてであった。OSPの学生たちは実際に生産者のところへ訪問し、
生産者がどのような想いで生産しているのか、しっかりとストーリーを取材した上でHPに掲載し情報発信している。

当初、後藤氏の元へ訪問しようとした時はコロナの影響が大きく直接の訪問は厳しい状況下であった。
まずはオンライン会議などで話を伺い、コロナが落ち着いてから最大限の感染対策を行った上で屋形島に訪問した。
吉川氏らが生産現場や養殖場などへ行き、生産に対する想いや、一枚ずつ丁寧に手作業で磨き、
色彩豊かに作り上げているこだわりなどを取材したという。



もともと吉川氏は県外出身であり、大学進学を機に別府市にやってきた。
別府で暮らしていく中で、人とのつながりを感じられる街だと感じたそう。
そこで得られた経験がOSPでの活動にも生きていると吉川氏は話してくれた。

「OSPを通じて、後藤さんをはじめとした生産者や、多くの消費者とつながりをもてた」
「この活動を通じて、食を媒体とした人とのつながりが一番の収穫だと感じる」

OSPは立ち上がって間もないが、これまでの生産者たちとの関わりを通して吉川氏はそう語ってくれた。
OSPではオンライン上での発信はもとより、オフラインでの活動も大切にしている。

生産者の思いや苦労はなかなか消費者には見えないところでもあるため、
取材で得た生の情報を、ホームページ上や販売現場であるマルシェなどで伝えているとのこと。

また、事業者のこれまでの人生経験にも取材を通して触れることができるので、
より深く生産者のことを知り、生産者の代わりに胸を張って消費者へ届けることもできると吉川氏は語る。

実際に緋扇貝などの生産品を、OSP主催のイベントで来場者に振舞いながら魅力も伝えた。

「OSPの活動では、生産が行われているところから、消費者が食べるところまでを見ることができ、
とてもやりがいのある事業だと感じる。だからこそ生産者と消費者をさらにつなげていく必要があると実感した」

OSPとしてはただ物を売るのではなく、生産のきっかけやこだわり、
消費者への想いなど、ストーリーや物語ごと消費者に届けたいとのこと。
この生産者が作ったものだからこそ買いたいという購買方法を広げていきたいとも、
強い信念を持って吉川氏は語ってくれた。

「緋扇貝は認知度も低くあまり知られていないが、その分調理方法や貝殻アートなど、
再利用で研究されていないのも魅力的」そう屈託のない笑顔で語る後藤氏。

2人は、緋扇貝のさらなる可能性として緋扇貝の貝殻を活用したキャンドルなども考案中だという。
通常、食べた後の貝殻は廃棄するだけとなってしまうが、そのような再利用方法を探ることで、
新たな緋扇貝の価値創出も行うことができる。
さらには廃棄物の削減にもつながり、環境問題の解決にも寄与することが出来るかもしれない。

今回のコラボ事例では生産者の販売支援にとどまらず、
新たな価値や産業創出など先を見据えた取り組みにもなっているように感じた。
取材時に後藤氏も語っていたが、緋扇貝を売っていくことで利益を地域に還元出来る。
そうすることで地域を存続させ産業として存続させていくことにつながる、と。

学生の観点で長期的な生産者支援を行っていくOSPの活動と、
緋扇貝の新たな可能性を追求していく後藤氏の取り組みが今後も楽しみである。

関連記事