大分カイコウ OITAKAIKOU

REPORT

Case

2021.01.07

【大分カイコウCase】アップサイクルの切り口で社会問題解決に取り組む 合同会社ビジョナリープロジェクト 林勇士氏

アップサイクルという言葉をご存知だろうか。従来より行われてきたリサイクルとは異なる、
本来捨てられる運命にあったモノに、アイデアや価値を付加させ、新たなものに生まれ変わらせる考え方のことである。

SDGsなど、持続可能性が叫ばれている昨今であるが、そのような取り組みを大分県の中津市で取り組んでいる事業者、
林勇士氏に話を伺う機会を得た。

大分大学に進学し、開発経済学という貧困地域の社会問題を解決する学問を専攻していた。
そこから自身も社会問題解決の仕事をしたいと思い、新卒で大阪にある産業廃棄物処理の会社に入社した。
林氏曰く、産業廃棄物を扱う会社は、運搬会社も含めて全国に10万社あるとのこと。
コンビニエンスストアが6万社弱あると言われているため、いかに多いかがわかる。

林氏はもともと自身での起業も考えていたようだ。大学在学中には留学経験もあったため、
海外のアップサイクル成功事例を学びに東南アジアやヨーロッパなどに移り住んだ。
自転車の廃タイヤに目を向けたきっかけは、オランダのアムステルダムに行った時、
アップサイクル専門店があり、そこでビジネスの相談をしたのが事の始まりだったそうだ。

初期投資もそこまでなく、自転車のタイヤであればハンドメイドもでき、
世界中どこでも廃材として出るため、社会問題解決の一つとして取り組みやすいものであると実感したそうだ。

ドイツにいた当時、現地の自転車屋から廃タイヤをもらい、まずは自身で作り始めた。
現在は中津市に戻り、自転車の廃タイヤをズボンに巻くベルトに仕立てるアップサイクルの事業に取り組んでいる。

今作っている廃タイヤベルトは、中津市の自転車修理屋やレンタルサイクルから廃材を集めて作っている。
作業の一部を就労支援で依頼しているため、環境問題の解決だけでなく雇用を生み出す一役も担っている。
ベルトの構造もシンプルにしており、作業性を高める工夫もしてあるそうだ。

また、中津市には自動車工場もあるため、そこから廃材を使った別商品の開発も計画しているとのこと。
車の内装を作るときに出てくる布シートなどの廃材を使い、トートバッグの試作品も現在作成中と語ってくれた。

タイヤのアップサイクルだけにとどまらず、規格外で捨てられている野菜などを使った商品開発の支援も、計画を進めている。
廃棄予定であった野菜をピクルスや漬物などにし、消費者が手に取りやすい形にして、お土産で販売したいと考えているようだ。
今は豊後高田の農家の方から廃棄野菜をいただき、新たな商品の開発中であると教えてくれた。

廃棄野菜を新たな商品として蘇らせることを一つの成功体験として育て上げ、
今後は困っている生産者の方々の支援も行っていきたいと語った。
社会問題を心から解決したいと願い、愚直に行動する林氏らしい取り組みである。

現在は地元でビジネスパートナーと組んで事業を進めているが、今後は様々なエリアで社会問題解決に取り組もうとしている。
この先さらなる社会問題解決に向け、製造業の方や食品系企業、農家の方々など多くの人と出会ってみたいと語ってくれた。

持続可能性という取り組みは、広い視野と長期的な展望で考えていかなければならない。
この大きなテーマに対し、廃材のアップサイクルという切り口で社会問題の解決に取り組む
林氏の今後の活躍に大いに期待したい。

関連記事