大分カイコウ OITAKAIKOU

REPORT

Case

2021.01.07

【大分カイコウCase】 日田下駄職人のモノ・コトづくりへの思い 本野はきもの工業 本野雅幸氏

大分県日田市は下駄の三大産地として有名である。
他県でいえば、静岡県静岡市、広島県福山市が挙げられるが、日田市はその中の一つである。
昭和20年代が、下駄生産の最盛期を迎えていたそうだが、近年職人の数は全国的に減っており、
日田市では現在8件ほどしか残っていないようである。

そのような中、若い力で日田下駄の製造に励む人物、本野はきもの工業 本野雅幸氏の取り組みを紹介する。

本野氏は現在、本野はきもの工業の3代目を務めている。
会社を退職後、新たな仕事先を探している最中、家業を手伝うことがあり、本野氏自身が作業を始めた。

実際に下駄を作ってみて、いざ自身で対面販売を行ってみたところ、
いかに一般の人が下駄に興味を持っていないかを切に感じたそうだ。
下駄を手に取ることもせず、説明も聞かないまま素通りされてしまう状況に、大きな悔しさを抱いたと当時を振り返る。

試行錯誤の中、自身で試作品を作ったところ、思った以上にカラフルでかっこいい下駄が出来上がった。
それを多くの人に見てもらったところ好反応で、下駄にはまだ大きな可能性があると確信したそうだ。

そこから、いかにして下駄に興味を持ってもらえるかを自身で考えながら、
製品として仕上げていく中で、下駄に対する面白さ・楽しさを感じるようになった。
それを機に自身で家業を継いでいくと決心し、現在に至った。

2016年にはメディアからの推薦を受け「LEXUS NEW TAKUMI PROJECT」へ参加した。
当プロジェクトは、半年間で構想から実際の製品作りまで仕上げ、
レクサスに今までなかったものを作るという取り組みである。

そのプロジェクトで本野氏は、下駄部分は地元日田市の日田杉を使用し、
鼻緒の部分は九州各地の伝統工芸品を使用した下駄を作り上げた。
福岡の博多織や鹿児島の大島紬などといったものを素材に使用している。
そのプロジェクトを通して、新たな下駄の表現にも取り組んだ。

本野はきもの工業では小ロットや1足からのオーダーメイド対応にも力を入れており、
一人ひとりに合った特別な下駄づくりも行っている。
鼻緒の部分を持ち込んで製造依頼をしてくる人もいるようで、思い入れのある下駄づくりも可能だ。
オンリーワンの下駄が作れることも、強みの一つとしている。

本野氏は、今まで下駄に馴染みがない若い人たちに興味を持ってもらいたい。
そのために新たな視点や感覚を持つデザイナーの方たちと邂逅したいと語る。

さらなる下駄の可能性を追求しながらも、下駄の楽しさを提案していく本野氏の今後の活動を、
大分カイコウとして応援していきたい。